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さんわ堂
さんわ堂
ドーナツ屋
場所:吉木エリア
小鳥の囀りと柔らかな日差しが心まで降り注ぐヴィーガンドーナツ屋さん
たまに、ボブマーリーとすれ違うことがある。
これは、地域の七不思議でもなければ、都市伝説でもない。
私はよくボブマーリーを見かける。これが今回のプロローグである。
田畑の合間から、おとぎ話のようなドーナツ屋への道がひらける。
読み手の感覚認識を向上させる為、言い方を変える。
鳥の囀りと木々の会話、大地の呼吸が支配するパノラマの中に、突如としてドーナツ屋が出現する。
さて、山×ドーナツ×レゲエでピンと来れば、貴方も地域スタンプラリーに1ポイント先取といったところか。
【さんわ堂】
店名の由来は、商売繁盛を願い、漁船によく見られる“家族の名前”を取り入れたハートウォーミングなもの。
家族の生きられるルールで、できることを生業にしようと、5年前から吉木地区へ移住し、ドーナツを作り続けている。
「たくさん売れてほしいけれど、売れるような場所じゃない」
そんなアンマッチな中でも、来てくれたすべてのお客様を、両手目一杯広げ迎え入れてくれる貴女は、屋号の所以になるのも納得。
入店するまでも都市とは異なる”時間軸の歪み”のようなものを、ぜひ肌で感じていただきたい。
私は、気持ちの切り替えや、季節の変わり目など、節目に【さんわ堂】を訪れる。
理由は『自分の生きる人生を愛せ。自分の愛する人生を生きろ。』(Bob Marley)で、喝を入れてほしいわけではなく、彼らと話をしていると、心当たりのある著作物が交差するからである。
かつて、ヘミングウェイはこう名言を残した。
『今はないものについて考える時ではない、今あるもので、何ができるかを考えるときである。』
彼はこうも言った、
『毎日が新しい日なんだ』と。
“やってきたことに意味があった”とレゲエの神様と見まごうご主人が云う。
自然とできた日常との乖離を、ひと針ひと針、丁寧に繋ぎ合わせてくれ、
生きていくヒントを与えてくれる、そんな居場所へドーナツを買いに行く。
彼ら【さんわ堂】が大切にしている出会いや価値観。
地域を土台に家族で生き抜くという、力強く根を張った意志をそこから感じる。
誰かの相対性理論と重ねるならば、ここになだらかな時間が流れているのは、重い意志が強い場所だからだろう。
都市のスピードを徐々に落とし、行く着く先は【さんわ堂】。
ぜひ一度、行きたい場所一覧にリストアップしてみてほしい。
エピローグとして、ひとつ紹介したいエピソードがある。
ある日、私がさんわ堂を訪れたとき、初めて長男坊(当時6歳)に会った。
お客さんへの挨拶を済ませ、くるっと背を向けて戻っていった彼を見送り、大人同士の会話へと戻った。
――しかし、いつの間にか、レジ脇にある飲み物コーナーから缶ジュースを1本取り出し、私の前に差し出してきたのである。
「え! 欲しくもない缶ジュースを買わせる、新手の家業詐欺か?」と一瞬戸惑った私に、
彼は、ママの後ろに隠れながら、恥ずかしそうに言った。
「あの、あげる。ボクのお小遣いから出す。」
欲しくもなかったそのジュースが、音速で“愛おしい飲み物”へと変わり、前述した思考を酷く恥じた。
無論、これは“私だけにしてくれた”と信じ、そして、続く次男坊に最大の期待を抱きつつ、
このちっちゃなラブストーリー(ロマンス詐欺)を、そっとここに置いておこう。
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